個人に重きを置く保守思想の持ち主に福田恆存がいる。革新勢力に疑義を呈し続けた評論家だ。
「福田恆存思想の〈かたち〉」を書いた文芸評論家の浜崎洋介さんは、「いま」に力点を置く福田の態度に保守の本質をみる。近代は、人々が旧来の共同体から離れて自由に生きることを称揚した。しかし、根っこのない人々による共同体は、どこか不安定で空虚だ。そのため、あるものは未来の理想社会を構想し、またあるものは過去の共同体を理想化する。
「福田はまず、いまの自分を構成しているのは何かを考えた。それは自然や言葉や歴史だった。これを壊そうとする革新を批判する一方、過去を理想化する復古も嫌った。自らの立脚点(いま)がどこかを考え抜かないと道は開かれないという思想が保守なんです」
さらに福田は、こんなー言葉も残している。「保守派はその態度によって人を納得させるぺきであって、イデオロギーによって承服させるべきではない」(野波健祐/朝日新聞_2015年9月27日)